令和3年度に入り3週間が過ぎようとしています。
当園では新入園児の慣らし保育の目安を約2週間としているので、ちょうど通常保育が始まったところになります。
また、在園児の子どもたちにとっても新しい場所、新しい先生、新しいお友達と環境も大きく変わるのが年度始めです。
この時期になると「新しい環境になって落ち着かない」や「新しい環境になったのにやけに落ち着いている」といった「落ち着いている」という言葉がキーワードとしてよく耳にします。
では、子どもたちが「落ち着いている」状態とはどのような状態なのでしょうか?逆に「落ち着いていない」状態とはどのような状態なのでしょうか?少し考えていきたいと思います。
まず、保育所とは保育所保育指針にもある通り、「子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行う」施設です。
ここで言う「養護」について保育指針の解説では「保育における養護とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わり」であるとされています。
つまり、保育者(保育士だけでなく保育所に関わる全ての人)は「子どもの生命の保持」と「情緒の安定」を図ることを常に念頭に置き考えながら保育にあたることが必要なのだと思います。
前置きが長くなりましたので本題に戻りましょう。(笑)
「落ち着いている」状態を考える際には、保育指針にある「養護」、とりわけ「情緒の安定」を基盤に考える必要があります。
保育指針を基にすると、情緒が安定している状態とは
① 一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせている。
② 一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができている。
③ 一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれている。
④ 一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されている。
こうした状態を指しています。
単に静かに座ってお絵描きをしたり、机に向かってパズルをしたりしていることが「落ち着いている」状態で、走り回っていたり、大声で話していたりすることが「落ち着いていない」状態として捉えてしまうことは、保育をする上で大切な部分を見落としてしまう危険があります。
見えている光景からだけでなく「情緒の安定」という視点から見た行動に着目してみましょう。
この視点に立つと一番に考えなければいけないことは、その行動をしている子どもの思いが何なのかにあるのではないでしょうか。
どうしてその行動をしているのか?こう見えるけど、こうしているけど本当は?子どもたちの真の思いを探し続け、その思いを実現できる環境を用意していくことが情緒の安定に何よりも必要な事だと思います。
子どもたちが本当の気持ちを出していきいきと過ごしている時(元気にしている、静かにしている、問わずその子の気持ちが安心して出せている時)こそ、「落ち着いている」「情緒が安定している」姿です。子どもはそうした安定感や安心感がある中で自ら環境(人・物・空間)に働きかけ、その世界を広げていくことで多くのことを学びながら成長していきます。
「気持ち」に決まった正解があるわけではありません。それでも、その子その子のことを一生懸命考え取り組むことに意味があり、一生懸命やってきたことであればあるほど、楽しそうに、嬉しそうに過ごしている姿に喜びを感じられるのでしょうね。子育てや保育の素敵さや偉大さがここに詰まっているような気がします。